Ⅰ 特徴的な事故実態
車は便利で快適な乗り物ですが、その反面、使い方を誤ると悲惨な交通事故を起こす
恐ろしい凶器にもなります。
交通事故は大きな社会問題であり、「交通戦争」と言われるほど、毎年多くの人が交通事故で死傷しています。
1 交通事故の特徴
① 発生時間帯
死亡事故は16時から20時の時間帯に多く発生しています。この時間帯に多発しているのは、 昼間に比べて運転に必要な情報が取りにくく、認知、判断が遅れること、交通量が少なくなって速度を出しやすく、また注意力が散漫になることなどが原因として挙げられます。
② 発生場所
死亡事故は交差点とその付近で最も多く発生しています。
交差点は上り下りだけではなく、左右の交通も加わり、また車両や歩行者が交わり合い、他の交通と関わり合いながら通行する場所だからです。
これについで単路の事故が多くなっています。単路は速度を出しやすいこと、無謀運転をしがちなことなどが関係しています。
次にカーブ・屈折地点が続きます。速度の出しすぎやハンドル操作のミスなど、安全を無視し運転が原因となっています。
③ 運転者の年齢
死亡・重症事故数を年齢層別に見ると、65歳以上の高齢者が最も多くなっています。若年運転者(16歳から24歳まで)による死亡・重症事故はこのところ減少傾向にありますが、死亡事故原因では、最高速度違反等の無謀運転や漫然運転が多く見られ、自己の運転を過信している傾向があります。
④ 運転経験
運転経験別に見ると、経験年数が短い人ほど事故を起こす割合が高くなっています。これは危険を予測する能力や安全運転をしようとする心構えが十分でないからと言えます。
⑤ 法令違反
死亡事故の要因となった法令違反の中では、漫然運転(注意力や集中力が欠)が最も多く、ついで運転操作不適、脇見運転、安全不確認の順となっていますが、若年運転者では最高速度違反が最も多くなっています。いずれも運転者の心構えとちょっとした注意や危険予測で防げるものです。
2 交通事故のパターン
交通事故はいくつかのパターンに分けることができます。いずれも、運転者の心がけ次第で防ぐことができます。
① 速度の出し過ぎによる事故
速度を出し過ぎると、危険を回避することができず、重大事故につながります。
常に道路や交通の状況に応じた安全速度を守ることが大切です。特にカーブを走行するときは、その手前で速度を十分に落としましょう。
② 無理な追い越しによる交通事故
追い越しは多くの危険を伴います。安全が確認できないときは、追い越しをしてはいけません。
③ 脇見運転による交通事故
運転中に脇見をすることは、大変危険です。周囲の風景や同乗者との会話やカーステレオ、携帯電話などの操作またはカーナビゲーションの画像を注視するなどして、脇見運転することは絶対しないようにしましょう。
④ 交差点での交通事故
【右折時】
右折するときは、対向車のかげになって見えないところ(死角)から、2輪車などが直進することがあるので、よく安全を確認することが大切です。
見えないところの危険を予測することが大切です。
【直進時】
交差点を直進する場合、対向右折車が止まるだろうと思って安易に直進してはいけません。特に対向右折車の動きに注意しましょう。
【左折時】
前車の動きに注意しましょう。前車の速度が落ちたからと安易に側方を通過すると、このような事故となります。
また、狭い交差点の場合、左折車は一度道路中央寄りに進路を取ったあと、左折してきますので、交差点手前で停止しましょう。
【追突】
前車が急停止しても追突しないだけの車間距離を取るとともに、前車ばかりでなくその前方の状況にも注意しましょう。
また、道路に駐車中の車両に追突しないように注意しましょう。
⑤ 優先道路通行中の交通事故
優先道路を通行している場合でも、突然、脇道から車や歩行者が出てくることがあるので、安全を確認し注意して進行しましょう。
⑥ 出会い頭事故
出会い頭事故を防止するために一時停止(徐行)と安全確認を徹底してください。
Ⅱ 2輪車の露出性と傷害
2輪車は全身が常に外部にさらされているため、事故を起こした場合は重大事故になる危険性が非常に高くなります。
① 服装など
a 体の露出がなるべく少なくなるような服装をし、できるだけプロテクターを着用しましょう。
b 他の運転者から見て、よく目につきやすいものを着るようにしましょう。
C げたやサンダルなど、運転の妨げになる履物を履いて運転してはいけません。
d 夜間は反射性の衣服、または反射材のついた乗車用ヘルメットを着用するようにしましょう。
e 同乗者も同じです。
② ヘルメットの着用
a 乗車用ヘルメットをかぶらないで2輪車を運転してはいけません。
b 乗車用ヘルメットは、PS(C)マークかJISマークのついたものを使い、あごひもを確実に締めるなど正しく着用しましょう。工事用安全帽は、乗車用ヘルメットではありません。
Ⅲ 交通事故の悲惨さ
交通事故を起こすと、運転者は民事上の責任(損害賠償)、刑事上の責任(懲役・禁錮・罰金)を負うとともに、行政処分(運転免許の取消・停止)を受けることになります。
また、交通事故によって、傷つき苦しむのは運転者本人だけではなく、家族も経済的損失と精神的苦痛などの大きな負担を負うことになります。
さらに、被害を負わせた相手やその家族に対しても、耐えがたい苦痛を強いることになります。車を運転するときは、このような交通事故の悲惨さをしっかりと心に刻み、安全運転に努めましょう。
Ⅳ 人命尊重の精神
交通事故は、運転者や歩行者などのちょっとした不注意や過失によって引き起こされており、努力次第で防ぐことができます。
現在ののように、車や人でふくそうする道路の上では、ほんのわずかなルール無視や油断がすぐ交通事故の原因となります。
運転者一人ひとりが、くるま社会の担い手としての自覚と責任を持たなければなりません。運転者は、「1歩間違えば、ただちに人命を奪う危険な業務に従事している」ことを、十分認識して、自分の能力のすべてを注いで安全運転に努めなければなりません。
1 人命の尊さを知ることが大切
運転者に特に求められるのは、「人の生命の尊さを知り、豊かな人間愛を持つ」ことです。そうすればおのずからスピードがセーブされ、ハンドルの切り方も慎重となり、他人に対して思いやりのある運転ができるようになるでしょう。
2 交通ルールを守ることが安全運転の第1歩
ルールを守らないプレーヤーはスポーツを行う資格がないように、交通ルールを守らない運転者は、車を運転する資格はありません。
交通ルールは、人や車が安全に進行できるよう定められたものですから、まずルールを守ることが安全運転の第1歩です。
3 運転技能を過信しないこと
運転技能の過信は、無理な運転につながります。「自分は運転が上手だ」と思っていて、つまり自分の運転技能を過信したことが原因となって、大きな事故を起こした例は少なくありません。
経験の浅い人は、よりいっそう慎重な運転をし、ベテランであっても、謙虚な気持ちで運転することが大切です。
4 責任感を持つこと
運転者は交通ルールを守り、安全運転をする義務がありますが、同時に事故を絶対に起こさないという強い自覚と責任感を持たなければなりません。
5 譲り合いの気持ちが大切
道路はお互いに譲り合って利用すべきものです。
自分本意の考え方を捨てて、譲り合いの気持ちを持って運転するように心がけましょう。
実際の交通の場では、ルールだけでは解決ができないときはことがたくさんありますが、これを解決してくれるのが譲り合いの気持ちです。
Ⅴ シートベルトの重要性
1 シートベルトの着用
運転者や同乗者の中には、面倒で窮屈、自分だけは大丈夫などといってシートベルトを着用しない人がいますが、シートベルトの着用は次のような効果があります。
シートベルトを備えている自動車を運転しているときは、運転者自身がこれを着用するとともに、助手席や後部座席の同乗者にもこれを着用させなければなりません。
2 シートベルトの着用の効果
① 衝突したとき、頭や胸を打つことが少ない。特に後部座席の同乗者の場合は、他の同乗者に危害を加える危険が少ない。
② 横転や転落事故の場合、ケガが軽くて済む。
③ ドアが開いても車外に放り出されない。
④ 運転姿勢が正しくなり、ハンドル操作が確実になる。
⑤ 動体視力の低下が少ない。
⑥ 腰や上半身が安定するため、疲労が少ない。
3 シートベルトの正しい着用法
シートベルトは正しく着用すると、交通事故に遭った場合の被害を大幅に軽減できます。
① シートの背は倒さずにシートに深く腰を掛ける
② 体を斜めにせず正しい姿勢を取る
③ 肩ベルト(3点式ベルトの場合)は首にかからないように、たるませないようにする。
④ ベルトがねじれないようにする。
⑤ バックルの金具は確実に差し込むようにする。
⑥ 腰ベルトは骨盤を巻くようにし、しっかり締める。