二輪車の特性、乗車姿勢と走行の仕方
1 二輪車の特性
二輪車は、体で安定を保ちながら走り、停止すれば安定を失うという構造上の特性を持っています。
① 重心と安定性
人が二輪車に乗ると、人車一体(じんしゃいったい)の重心ができます。この人車一体の重心からの重力と遠心力を合わせた力がタイヤの接地点にある状態にあるとき、二輪車の安定走行が可能です。したがって、人車一体の重心が一方に片寄るとハンドルを取られたり、ゆるいカーブで転倒したりします。
② 乗車姿勢と操縦性
安定して走行するためには、車の変化に合わせて重心を移動させることです。上り坂では前輪の浮き上がりを防ぐため、前傾姿勢を取り、重心を前に移動します。反対に下り坂では、腰を引いて腕を伸ばし、後ろに重心を移動します。
悪路では中腰姿勢を取り車の変化に合わせて、重心の移動をスムーズにします。
③ AT(オートマチック・トランスミッション)二輪車の特性
・スクータータイプの二輪車はホイールベース(前輪の接地面と後輪の接地面の間隔)がMT(マニュアル・トランスミッション)二輪車のそれと比較して長いので、小回りが難しく、ニーグリップ(燃料タンクを両ひざで挟むこと)ができないので、安定した運転姿勢を維持しにくい。
・AT二輪車の大半で採用されているCVT(無段変速装置)は低速時に、エンジンの動力がタイヤに伝わりにくいので転倒しやすく、エンジンブレーキ(アクセル・グリップをゆるめることで、ブレーキが掛かったように遅くなること)が弱い。
・急激なアクセル・グリップの操作は急発進につながり危険。
2 正しい乗車姿勢
正しい乗車姿勢をとることが、走行中の重心を安定させる秘けつです。運転しやすい正しい乗車姿勢をとりましょう。
【MT二輪車】
① 背筋を伸ばし、視線は先の方に向ける。
② 手首を下げて、ハンドルを前に押すようなつもりでアクセル・グリップを軽く握る。
③ 肩の余分な力を抜き、ひじをわずかに曲げる
④ ステップに土踏まずを乗せて、足の裏が地面にほぼ水平となるようにする。また足先はまっすぐか、ハの字になるように前方に向けて、燃料タンクを両ひざではさむ(ニーグリップ)。
【AT二輪車】
① 両肩および背筋の余分な力を抜き、視線は前方に向ける。
② 両腕の余分な力を抜き、ひじにゆとりをもたせる。
③ 手はアクセル・グリップの中央を持ち、手首に角度を持たせる。
④ 前過ぎたり、後ろ過ぎたりしないようにシートに着座する。
⑤ ひざが外に開かないように、自然に曲げる。
⑥ ステップボードから足がはみ出さないように乗せ、足先をまっすぐ向ける。
【車種の選び方】
① 二輪車を選ぶときは、体格に合った車種を選ぶようにし次のことができるようにしましょう。
・平地でセンタースタンドを立てることが楽にできること。
・二輪車にまたがったとき、両足のつま先が地面に届くこと。
・8の字に押して歩くこと(とりまわし)が完全にできること。
② 二人乗りをするときは、後部座席にゆとりのあるものを選びましょう。
Ⅲ 走行のしかた
1 走行位置のとり方
二輪車は、速度が低く、遠くにいるように感じられ、また、見落とされやすいので四輪車の死角に入らない位置を選んで走行しましょう。
また二輪車は転倒を避けるために、道路の凹凸や障害物を避けて走行するため、
・走行車線上の近くを見る傾向がある。
・道路の左側前方を注視する(2秒以上見る)傾向がある。
など、四輪運転中に比べて視界が狭くなりがちです。意識して遠くの前方を視野に入れるように心がけましょう。さらに、運転中に比べて後方の情報を取る量が少なくなりますので、積極的に後方の情報を取りましょう。
2 カーブ走行の仕方
① カーブに近づくときは、その手前の直線部分であらかじめ速度を落とし、カーブの途中では、クラッチ(動力)を切らないで、車輪にエンジンの力をかけて走行しましょう。
② 曲がるときはハンドルを切るのではなく、車体を傾ける(バンクさせる)ことによって自然に曲がるようにしましょう。
③ 曲がり角やカーブでは追い越しをしてはいけません。
Ⅳ 二人乗りをする時の心得
二人乗りをするときは一人乗りの運転に習熟してからするようにしましょう。
1 二人乗りの運転特性
① 重量が増える分、加速力は小さくなり、遠心力や慣性力は大きくなる、また、重心は後方へ移動し高くなる。
② 運転者と同乗車が一体とならないと転倒のリスクが高くなります。加速時には後ろに引っ張られるようになり、急な減速時には前に押し出されるような動きになります。また、カーブを曲がるときは傾きを同乗者が恐れて体を起こし、また急激に倒しこむような動きをすることがあるので、乗せる前にアドバイスをしましょう。
2 二人乗りの禁止
次の場合には二人乗りをしてはいけません。
① 大型自動二輪車や普通自動二輪車で後部座席が無いものや、原動機付自転車を運転するとき。
② 大型自動二輪免許を受けて1年を経過していない者が、大型自動二輪車または普通自動二輪車を運転するとき。ただし、普通二輪免許を受けて1年経過している場合は二人乗りをすることができます。
③ 普通二輪免許を受けて1年を経過していない者が普通自動二輪車を運転するとき
④ 大型二輪免許を受けた者で、20歳未満の者または、大型二輪免許を受けていた期間が3年未満の者が、高速道路で大型自動2輪車または普通自動二輪車を運転するとき。ただし、20歳以上でかつ、普通二輪免許を受けていた期間が3年を経過している場合は、二人乗りをすることができます。
⑤ 普通二輪免許を受けた者で、20歳未満の者または、普通二輪免許を受けていた期間が3年未満の者が、高速道路で普通自動二輪車を運転するとき。
Ⅴ 速度と衝撃力
交通事故の大きさは、車が衝突したときに相手に与えたり、自分が受けたりする衝撃力の大きさに関係します。
衝撃力は速度と重量に応じて大きくなり、また、固いものに瞬間的にぶつかるほど衝撃力は大きくなります。例えば、時速60キロメートルでコンクリートの壁の衝突したときは、約14メートルの高さ(ビルの5階程度)から落ちた時と同じ程度の衝撃力を受けます。
車が衝突すると、運動エネルギーによって、その車や衝突した相手の物を破壊したり、跳ね飛ばしたりします。この運動エネルギーは、車の速度の2乗に比例して大きくなるので、速度が高ければ高いほど衝突による被害は大きくなります。