Ⅰ 自動車各部の保守と手入れ
自動車走行にあたって、日常点検はもちろんのことですが、外観を含めて手入れが必要です。
1 四輪車の点検
① バッテリー(蓄電池)
バッテリーは自動車の電気装置の電源です。次のような点に注意しないと、電気容量が低下し、エンジンがかからなくなってしまいます。
・電解液は、極板が露出しないように、規定量を保つことが大切です。
・電解液が減っていたら、蒸留水(補充液)を補充します。井戸水や水道水を使用してはいけません。
・ターミナル(端子)の締め付けは、確実に行いターミナルや配線の接続部が白く汚れた場合は、温水で掃除しグリースなどを塗っておきましょう。
・寒冷期にはバッテリーの容量低下(バッテリー上がり)を起こしやすいので、完全充電状態を保ち、かつ始動操作に注意しましょう。
◯ バッテリーについての注意点
・電解液は希硫酸または希硫酸が入っている補充液は身体や衣服につけないようにしましょう。
◯ バッテリーが上がってしまった場合
・故障車と他の車(救援車)をブースターケーブルでつなぎエンジンを始動させる方法があります。
①故障車のプラス電極(赤色)と②救援車のプラス電極(赤色)を赤色のコードでつなぐ③救援車のマイナス電極(黒色)と④故障車のエンジンブロックを黒コードで接続する。⑤救援車のエンジンを先に始動させ、次に故障車のエンジンを始動させる。接続方法と順番は間違えないようにしてください。外す順番はつなぐ順番と逆になります。
② ワイパー及びウィンドウ・ウォッシャ液
ワイパーは、降雨または降雪時に、前方または後方ウィンドウをきれいにして、視野を確保するものです。
次の点に注意して点検し、不良の場合は修理しましょう。
・ワイパー・ブレードがウィンドウに平均にムラなく当たっているか確かめます。
・ウィンドウ・ウォッシャ液の量は十分か、適当な位置に噴射されるか確かめます。走行中、ウィンドウに飛んだ汚水または泥によって視界が悪くなるので、ウィンドウ・ウォッシャ液をウィンドウに吹き付け、ワイパーで取り除きましょう。
③ ライト等
日常点検で点灯することが確認されても、ライトの照射方向を正しく調整しておかなければなりません。またライトなどのレンズはきれいに手入れしておかなければなりません。
④ ウィンドウガラス
ウィンドウガラスは、常に良好な視界が得られるようにしておかなければなりません。前面ガラスなどにマスコット類をぶら下げたり、必要なシールを貼ったり、後部の窓にカーテンを取り付けたりしてはいけません。
2 二輪車の点検
点検に当たっては次の事柄を確かめましょう。
① ブレーキのあそびや効きは十分か。
② 車輪にガタやゆがみはないか。
③ タイヤの空気圧は適正か。
④ チェーンが緩みすぎていたり、張りすぎていたりしないか。(チェーンの中央部を指で押してみて、指ひと関節分くらいの余裕が必要)及び注油がされているか。
⑤ ハンドルにガタつきはないか、重くはないか。
⑥ 灯火は正常に点灯するか。
⑦ バックミラーはよく調整されているか。
⑧ マフラーは完全に取り付けられているか、破損していないか。
Ⅱ 携行品、工具などの点検および使用法
1 携行品
自動車には、非常信号用具として発煙筒、赤色懐中電灯などを備えていなければなりません。
またこれらのほか赤色旗、救急箱など非常の場合に必要な用具や、故障で長時間駐車する場合の危険防止の用具として、停止表示器材(停止表示灯または停止表示板)を備えておきましょう。
冬季には降雪に備えて、タイヤチェーン、スコップ、砂袋などの備え付けも必要です。なお、消火器の備え付けを義務付けられている車両もあります。
2 携帯工具の点検と使用法
自動車には付属品として、スペアタイヤを始めジャッキや軽微な故障修理するための工具を備え付けていなければなりません。
必要なときにいつでも使えるように点検し、その使用方法を覚えておきましょう。主な工具類と使用方法は以下の通りです。
① ドライバー(ネジを緩めたり、締めたりするために使用します。プラス型とマイナス型があります。)
② プラグレンチ(点火プラグの脱着に使います。)
③ スパナ(ボルトやナットを締めたり、緩めたりするために使用します。ボルトやナットのサイズによって適宜使い分けをします。)
④ モンキースパナ(ボルトやナットを締めたり、緩めたりするために使用します。口径をネジで加減できるので、数多くのスパナの役目をします。)
⑤ プライヤ(スパナを使用するまでに至らないものを緩めたり、締めたりするために使用します。口の大きさが2段になっており、用途によって使い分けます。また針金などを曲げたり、切ったりします。)
⑥ ハブナットレンチ(車輪を外したり、取り付けるために使用します。一端はホイールキャップの取り外しができるようになっています。)
⑦ ジャッキ(タイヤやタイヤチェーンを取り付けたり外したりするときに、タイヤが地面から浮くまで持ち上げるために使用します。)
⑧ 輪止め(タイヤ交換やタイヤチェーン装着時などに車が動き出さないようにするために使用します。)
Ⅲ タイヤの交換方法等
1 タイヤの交換要領
パンクしてタイヤ交換作業に取りかかかるときは、平らな堅い路面で、しかも交通障害にならない安全な場所を選びます。また、夜間はなるべく明るい場所で、他の自動車から確認できるよう駐車灯または非常点滅表示灯を点灯して作業するのが安全です。
作業は次の要領で行います。
① 駐車ブレーキをして、ギアはローかバック(AT車ならPレンジ)に入れておきます。また、対角線の車輪に輪止めをします。
② トランクから、ジャッキ、スペアタイヤ、工具、停止表示器材(停止表示板または停止表示灯)を取り出します。
③ ホイールキャップのついている車は、ナットハブレンチの一方で外し、ナットを緩めます。このときまだジャッキアップしません。
④ 定められた位置(ジャッキアップポイント)にジャッキを当てて、タイヤが地面から少し浮くまで上げます。
⑤ ナットを全部取り外します。
⑥ タイヤを交換します。
⑦ 仮締めをします。ナットを取り付ける際は、向きに注意します。
⑧ ジャッキを下ろしタイヤが接地したら、ハブナットレンチで対角線上にナットを締めていきます。均等な強さで締めます。
⑨ ホイールキャップを取り付ける際も向きや角度に気をつけて、はずれないように注意します。
⑩ 工具類やタイヤを確認します。もう一度、ナットが確実に閉まっているか確認します。
2 タイヤチェーンや防滑タイヤ
積雪や凍結している道路において自動車を運転するときは、タイヤチェーンまたは防滑タイヤ(スノータイヤ、スタッドレスタイヤ等)を用いて、滑り止めの処置を講じなければなりません。
タイヤチェーンは駆動輪(エンジンの力で回転するタイヤ)に取り付けます。前輪駆動車(FF車)は前輪に、後輪駆動車(FR車)は後輪に取り付けます。
スノータイヤはタイヤのトレッド部(接地面)の溝を深くし、突起をつくったり、またスタッドレスタイヤ、特殊配合ゴムを使って凍結路面に対する粘着性を強め、雪道や凍結している道路における発進や制動が、円滑に容易にできるようにしたものです。
3 タイヤチェーンの装着要領
① 駆動輪側をジャッキアップをします。
② タイヤチェーンをかけます。このとき、チェーンの表裏に注意します。コネクタの爪がタイヤを傷つけないように外側にかけます。
③ 車体側のフックを留めます。外側のフックを留めたあと、チェーンバンドを装着します。このときもバンドの爪が外側に向くようにします。
④ ジャッキから下ろし、反対側のタイヤも同様にします。
⑤ 走行したときにタイヤチェーンがたるみ過ぎているようなら、装着し直します。
なお、ダルジャッキアップしない方法もあります。
Ⅳ 日常点検の方法
1 日常点検の必要性
日常点検は、自動車の使用者や自動車を運行しようとする者が、日ごろ自動車を使用していくなかで、自分自身の責任において行う点検です。自動車の使用者は、自動車の走行距離や運行時の状態などから判断した適切な時期に、この点検を行わなければなりません。
なお、タクシーやハイヤーなどの事業用自動車などを運行しようとする者は、1日1回、運行する前にこの点検を行わなければなりません。
2 点検箇所と点検方法
① ブレーキペダル(ふみしろ、きき)
【四輪車の場合】・・・ペダルをいっぱいに踏み込んだとき、床板とのすき間(踏み残りしろ)や踏みごたえが適当であるか点検します。なお、床板とのすき間が少なくなっているときや、踏みごたえが柔らかく感じるときは、ブレーキ液の液漏れ、空気の混入によるブレーキのきき不良のおそれがあります。
【二輪車の場合】・・・(後輪)ブレーキペダルや(前輪)ブレーキレバーあそびや踏み(引き)ごたえが適当であるかを点検します。なお、ペダルを踏んだときに、踏みごたえが柔らかく感じるときは、ブレーキ液の液漏れ、空気の混入によるブレーキのきき不良のおそれがあります。
② 駐車ブレーキ(パーキングレバーまたはペダル)
引きしろ(踏みしろ)・・・レバーをいっぱいに引いたとき(ペダルをいっぱいに踏み込んだとき)に引きしろが多すぎたり、少なすぎたりしないかを点検します。
③ エンジン(原動機)
かかり具合、異音・・・エンジンが速やかに始動し、スムーズに回転するか点検します。また、エンジンが始動時及びアイドリング状態で、異音がないかを点検します。
低速、加速の状態・・・エンジンを暖気させた状態で、アイドリング時の回転がスムーズに続くかを点検します。エンジンを徐々に加速したとき、アクセルペダルに引っかかりがないか、またエンスト、ノッキングを起こすことなくスムーズに回転するかを走行するなどして点検します。
④ ウィンドウ・ウォッシャー
噴射状態・・・ウィンドウ・ウォッシャ液の状態噴射の向き及び高さが適当かを点検します。
⑤ ワイパー
ふき取りの状態・・・ワイパーを作動させ、低速及び高速の作動が不良でないかを点検します。きれいに拭き取れるかを点検します。
⑥ 空気圧力計(排気ブレーキ装着車)
空気圧力の上がり具合・・・エンジンをかけて、空気圧力の上がり具合が極端に遅くないかを点検します。また、空気圧力が空気圧力計の標示に示された範囲内になるかを点検します。
⑦ ブレーキバルブ(排気ブレーキ装着車)
排気音・・・ブレーキペダルを踏み込んで放した場合に、ブレーキバルブからの排気音が正常であるかを点検します。
⑧ ウィンドウ・ウォッシャタンク
液量・・・ウィンドウ・ウォッシャ液の量が適当かを点検します。
⑨ ブレーキオイルのリザーバ・タンク
液量・・・リザーバ・タンクの液量が規定の範囲内にあるかを点検します。
⑩ バッテリー(蓄電池)
液量・・・バッテリー各槽の液量が規定の範囲内にあるかを車両を揺らすなどして点検します。
⑪ ラジエータなどの冷却装置
水量・・・リザーバ・タンク内の冷却水の量が規定の範囲内かを点検します。なお、冷却水の量が著しく減少しているときは、ラジエータ、ラジエータホースなどからの水漏れのおそれがあります。
⑫ 潤滑装置
エンジンオイルの量・・・オイルの量がオイル・レベルゲージ(油量計)で示された範囲内にあるかを点検します。なお、2サイクルエンジンの場合、タンク内のオイルの量が十分であるかを点検します。
⑬ ファンベルト
張り具合、損傷・・・ベルトの中央部を手で押し、ベルトが少したわむ程度であるかを点検します。ベルトに損傷がないかを点検します。
⑭ 灯火装置、方向指示器
点灯、点滅具合、汚れ、損傷・・・エンジンスイッチを入れ、前照灯、制動灯などの灯火装置の点灯具合や方向指示器の点滅具合が不良でないかを点検します。レンズなどに汚れや損傷がないかを点検します。
⑮ タイヤ
空気圧・・・タイヤの接地部のたわみの状態により、空気圧が不足していないかを点検します(タイヤの適正な空気圧は、車によって異なります。取扱説明書になどに表示があるので参考にして、エアゲージ等を使用し調整しましょう)。
取り付けの状態・・・ディスク・ホイールの取付の状態を目視する(ホイール・ナットの脱落、ホイール・ボルトの折損などの以上はないか、ホイール・ボルト付近にサビ汁が出た痕跡はないか、ホイール・ナットから突出しているホイール・ボルトの長さに不ぞろいはないか)。ディスク・ホイールの取り付け状態について、ホイール・ナットの緩みなどがないかを点検ハンマなどを使用して点検します。
亀裂、損傷・・・タイヤの全周に著しい亀裂や損傷がないかを点検します。また、タイヤの全周に渡り、くぎ、石などの異物が刺さったり、噛み込んでいないかを点検します。
異常な摩耗・・・タイヤの接地面に、極端にすり減っている箇所がないかを点検します。
溝の深さ・・・溝の深さが十分であるかをウェア・インジケータ(スリップサイン)などにより点検します。
⑯ エア・タンク
エア・タンク内のたまり水・・・ドレンコックを開いて、タンクに水がたまっていないかを点検します(エア・ブレーキ装着車)。
3 高速走行前の点検
高速走行をすると、低速走行中では予想できないような故障が発生することがあります。また、高速走行中は、小さな故障も大事故に結びつくので、念入りな点検が必要です。特に高速道路では、燃料、冷却水、エンジンオイルの不足により停止することのないよう注意するとともに、停止表示器材の準備も必要です。