Ⅰ 運転と性格
1 運転に現れる性格
運転技術が同じでも、運転の仕方は人によって違います。運転者個人の性格や癖が運転に大きな影響を与えるからです。
2 交通事故を起こす人、起こさない人
交通違反をすることや交通事故を起こすことと、運転者の性格や癖の間には関係があることが知られています。
運転者の中には、何年間も無事故無違反の人もいれば、1年間に何回も交通違反や交通事故を繰り返す人もいます。
Ⅱ 運転適性検査
自分の性格や癖を知るには、他の人に運転を見てもらうのもひとつの方法ですが、専門家によって実施される運転適性検査を受ければ、運転に関係が深い動作・行動や性格について、より正確に知ることができます。
Ⅲ 運転適性検査結果の運転への活用など
1 タイプ別の特徴と運転
① 状況判断が遅い人
周囲の状況をすばやく判断することが苦手な人です。交通量の多い交差点や、歩行者、自転車の多い道路を通行するときによく考えずに行動することがあります。
複雑な状況のなかで、あて推量で行動するのは危険です。教習で学習したことを思い出して運転しましょう。どこに危険が潜んでいるかを見抜き、危険に対して適切な行動をすることが大切です。
② 動作は速いが正確さに欠ける人
何ごとにも活動的な人といえます。たいていの場合は運転も上手でキビキビ走ります。しかし、運転に慣れてくると、油断やうっかりしてしまうことがあります。一つひとつの操作を正確に行っているかをときどき自分で点検しましょう。
また、周囲の状況によく気を配り、一呼吸おいて行動を開始しましょう。
③ 神経質な傾向のある人
細やかな気配りのできる人です。
しかし、細かいことを気にしすぎて大事なことを見落としたり、過ぎ去ったことを気にするあまりうわの空で運転することがあります。
初心者のうちは運転に神経を使うことが多いものです。周囲の状況にバランスよく気を配るとともに、あまり緊張しないでリラックスして運転しましょう。
④ 気分の変わりやすい人
気分の変化が激しい人です。
特に気分が沈んでいるときは、頭の回転、体の動きの両方が低調となり、普段の能力を十分に発揮できません。このようなときは運転を控えるか、気分転換をして気分を落ち着けてから運転しましょう。
⑤ 攻撃的な傾向のある人
他人に批判的な傾向があります。たとえ自分に法規的な優先権があっても、どこまでも主張してよいわけではありません。運転者の中には運転の下手な人もいますし、間違いをする場合もあります。自分が譲るくらいの余裕を持つことが大切です。
⑥ 自己中心的な傾向のある人
いつもマイペースで行動できる人です。
しかし、周囲への気配りにやや欠けることがあります。自分の行動が他人に迷惑をかけていないか、ときどき振り返ってみましょう。
2 「OD式安全テスト」タイプ別の特徴と運転
OD式安全テストでは、「運動機能」、「健康度・成熟度」、「性格特性」、「運転マナー」の4つの要素から16の特性を評価するとともに、安全運転に求められる適性を総合評価として診断しています。
総合評価には、主に運転操作に必要な心のはたらきについて評価した「運転適性度」、安全運転に求められる性格特性などについて評価した「安全運転度」があります。さらに、「運転適性度」と「安全運転度」の組み合わせから4つの運転タイプに分類されます。
① 安全運転タイプ
「運転適性度」、「安全運転度」とも平均以上で、比較的安全に運転できるタイプです。しかし、事故を起こす可能性が無いとはいえないので、油断は禁物です。
② もらい事故傾向タイプ
安全に対する意識が高く、自ら事故を起こす可能性は低いですが、技術的にもたつき、事故に巻き込まれやすいタイプです。
交差点の右左折や車線変更など複雑な運転操作が求められる場面では、特に注意が必要です。
③ 重大事故傾向タイプ
運転操作は比較的器用にこなせますが、安全運転をしようとする気持ちが不足しているタイプです。
自分の運転技術を過信することなく、常に安全第一を心がけることが大切です。
④ 事故違反多発傾向タイプ
「運転適性度」、「安全運転度」ともに低く、運転適性があるとはいえないタイプです。
事故に結びつきやすい特性を理解し、安全を最優先にした運転を心がけてください。
3 危険に結びつく心の状態
いつも落ち着いた状態で運転するのが理想ですが、ときにはイライラしたり、落ち込んだりすることがあります。そんなときは特に注意が必要です。
① イライラ
出かける前におもしろくないことがあったり、または渋滞で思うように走れなかったりすると、イライラすることがあります。イライラすると、スピードを出したりほかの車に対する注意力が低下したりします。これは大変危険なことです。
② 悩みごと
家庭、職場、学校での悩みごとがあると、運転中にうわのそらになったり、気分が沈みこんで、注意力が散漫になることがあります。
③ 慣れと気のゆるみ
初心者のうちは慎重に運転しますが、少し慣れてくると、漫然とした運転になりがちなので注意が必要です。
④ 運転技能の過信など
自分は運転が上手だ、絶対に交通事故は起こさないと考えがちですが、このような考え方は大変危険です。運転するときには、常に慎重さと謙虚さを忘れないことが大切です。
⑤ 先を急ぐ気持ち
学校や会社に遅刻しそうになったり、待ち合わせの時間に遅れそうな場合は、スピードを出したり、赤信号を無視するなど危険な運転をしがちです。時間にゆとりを持って行動することが大切です。
「防衛機制(ぼうえいきせい)」・・・自分の欲求が満たされないと人間の心は不安定になります。人間の心には欲求が満たされない場合に、別なもので欲求を満足させることによって心の安定を保とうとする働きがあります。このような働きを防衛機制といいます。
防衛機制の結果として現れる運転行動は、しばしば交通事故に結びつく危険な運転行動となることがあるので注意が必要です。
イライラを発散しようとして、スピードを出したり、ほかの車に幅寄せをすることはその例です。