Ⅰ 夜間の運転
夜間は昼間に比べて、歩行者や他の車が見えにくく、発見が遅れることがあるため、運転中の危険が多くなります。
また、速度を出している車や酒に酔っている歩行者がいることがあるので、慎重な運転をしなければなりません。
1 前照灯と視界
① 前照灯の照射範囲
夜間の照明のない道路では、前照灯の照射する範囲しか見えません。
前照灯の光は上向きで100メートル、下向きで40メートル前方の障害物を確認できる程度の明るさですから、この範囲内で車が停止できる速度で走行しなければ危険です。例えば、前照灯を下向きにして時速60キロメートルで走行中に、障害物を発見した場合は、(停止距離が約44メートルなので)障害物を避けきれなくなります。同じ道路でも、夜間は昼間より速度を落とし、車間距離を長めにとって運転することが大切です。
② 色による見え方の違い
夜間は黒っぽい服を着ている歩行者や自転車に乗っている人は、見えにくいことがあります。
③ 対向車のライトと眩惑(げんわく)
夜間、対向車のライトを直接目に受けると、眩しさのために一瞬見えなくなることがあります。これを眩惑といいます。
眩惑された目が正常な視力に回復するまでには、少なくとも数秒かかります。眩惑された状態で車を運転することは、目を閉じて運転することと同じで非常に危険です。
対向車のライトが眩しいときは、視点をやや左前方に移して、目が眩まないようにします。また、他の車と行き違うときは、あらかじめ手前で前照灯を下向きにして相手が眩しくないようにします。
④ 蒸発現象
夜間に、自分の車のライトと対向車のライトで道路の中央付近の歩行者や自転車がが見えなくなることがあります。これを蒸発現象といいます。
蒸発現象は特に暗い道で起こりやすいので十分注意しましょう。
また、夜間に雨が降ると、ライトの光が濡れた路面などに乱反射して、いっそう見えにくくなることがあるので、前方に注意を払い、減速して進行しましょう。
⑤ 夜間の運転と距離感
夜間は、前車や対向車までの距離感を、相手の車の尾灯や前照灯の位置や明るさによって判断します。大型車は、前照灯と尾灯の取り付け位置が普通車に比べて高い場所にあるため、前を走っている大型車までの距離を実際より長く判断したり、対向の大型車の位置を実際より遠くに判断しがちです。
また、2輪車は4輪車に比べて、前照灯が暗く前照灯が少ないため、対向の二輪車を見落としたり、実際の位置より遠くに判断しがちなので注意しましょう。
2 道路照明などの影響
① 沿道の照明の影響に注意
道路照明施設の整備に加え、夜遅くまで営業するコンビニエンスストアなどが増えた結果、夜間でも明るい場所が増えています。しかし明るい場所以外では駐停車している車や歩行者が見えにくいので非常に注意が必要です。
また、沿道の店の明かりに気を取られて脇見をすると、大変危険です。
尚、夜間にやむを得ず道路に車を止める場合は、追突を防止するためになるべく明るい場所に止めるようにしして、駐車灯か非常点滅灯をつけるようにしましょう。
② 速度を出している車や酒に酔っている人に注意
夜間は、昼間に比べて道路が空いているので、高い速度で走っている車が多く、酒に酔った歩行者や自転車が道路をフラフラしていることがありますので、自分が安全運転をするのはもちろんのこと、事故に巻き込まれないように注意しましょう。
Ⅱ 灯火をつけなければならない場合
1 夜間などに道路を通行するとき
夜間道路を通行するときは、前照灯(ヘッドライト)、車幅灯(スモールランプ)、尾灯(テールランプ)などをつけなければなりません。昼間でもトンネルの中や濃い霧などのため視界が50メートル(高速道路では200メートル)先が見えないような場所を通行するときも同じです。 ※法定速度(60km/h)の停止距離が約44メートル、100km/hの場合は悪条件が重なると停止距離100メートルの2倍以上必要だから。
2 夜間などに道路に駐停車するとき
自動車(大型自動2輪車・普通自動2輪車及び小型特殊自動車を除く)は夜間、やむを得ず道路に駐停車するときは、非常点滅表示灯(ハザードランプ)、駐車灯または尾灯をつけなければなりません。昼間でもトンネルの中や濃い霧の中などで視界が50メートル先が見えないような場所に駐停車するときも同じです。しかし、
・道路照明などにより、50メートル後方から見える場所に駐停車しているとき
・停止表示器材(停止表示板、停止表示灯)を置いて駐停車しているとき
は、その必要がありません。
夜間、高速道路でやむを得ず駐停車する場合には、非常点滅表示灯、駐車灯または尾灯をつけるほか、停止表示器材を置かなければなりません。
3 点灯制限等
① 室内灯(マップランプ)の点灯制限
自動車の室内灯は、バスのほかは走行中につけないようにしましょう。
② 行き違い時などでの前照灯の操作や眩惑(げんわく)の回避措置
・前照灯は、交通量の多い市街地などを通行しているときを除き、上向きにして
歩行者などを早く発見するようにしましょう。ただし、対向車と行き違うときや他の車と行き違うときや、他の車の直後を通行しているときは、前照灯を減光するか下向きに切り替えなければなりません。
・交通量の多い市街地の道路では、前照灯を下向きに切り替えて運転しましょう。また、対向車のライトがまぶしいときは、視点をやや左前方に移して、目が眩(くら)まないようにしましょう。
③ 見通しの悪い交差点などでの前照灯の操作
見通しの悪い交差点やカーブの手前では、前照灯を上向きにするか、点滅させ(パッシングし)てほかの車や歩行者に交差点への接近を知らせましょう。
4 雨のときの運転
雨のときは視界が悪く、路面が滑りやすくなります。
さらに、歩行者も足元に気を取られたり、傘などで視界が妨げられて車の接近に気づかないことがあるなど、悪条件が重なるので慎重な運転を心がけなければなりません。
① 視界
・ワイパー(4輪車)
雨の日の視界は、ワイパーの作動範囲に狭められ、周囲の状況判断ができにくくなります。
ワイパーの作動が不良になると、視界は更に悪くなるので、常に整備しておく必要があります。
・窓ガラスの曇り止め(4輪車)
雨のときは窓ガラスが曇りやすいので、エアコン(AC)やデフロスター(霜取り)を作動させたり、曇り止めスプレーなどを使用したり、布で拭いたりするなど視界をよくするようにしましょう。
・ライトの使用
雨で視界が悪いときは、昼間でもライトをつけましょう。特に高速道路などでは、巻き上げられた水しぶきなどで周りが見えにくくなるので、ライトをつけて自分の車の存在を知らせるようにしましょう。
② 路面の滑りやすさ
・速度を落とし車間距離は長めに
雨のときは路面が滑りやすくなり、速度が出ていると停止距離も長くなる(晴れの日の約1.5倍になる)ので、晴れのときより速度を落とし、車間距離を長くとって走行しましょう。
・急ハンドル、急ブレーキ及び急発進の回避
雨のときの急発進、急ハンドル及び急ブレーキは横すべりなどを起こしやすいので避けましょう。ブレーキはエンジンブレーキ(アクセルをゆるめるまたは1段低いギア)を使用したり、ブレーキを数回に分けてかけるようにしましょう。
・レール、鉄板などに注意
a 路面電車のレールが濡れているときは、タイヤがレールに対してなるべく直角に近い角度になるように横切りましょう。
b 工事現場の鉄板、マンホールなどが濡れている場合は、すべりやすいので急ブレーキをかけないようあらかじめ、十分に速度を落として走行しましょう。
・ハイドロプレーニング(水上滑走)現象
路面が水で覆われているときに高速で走行すると、タイヤが水上スキーのように水の膜の上を滑走することがあります。これをハイドロプレーニング現象といいます。このような状態になると、ハンドルやブレーキがきかなくなり、非常に危険です。
雨のときはハイドロプレーニング現象が起きないよう速度を落として走行しましょう。
・深い水たまりの回避
深い水たまりのある場所を通ると、ハンドルを取られたり、ブレーキがききにくくなることがあるので、できるだけ避けて通るようにしましょう。
③ 歩行者などに対する気配り
歩行者や自転車のそばを通るときには、泥や水をはねたりしないよう思いやりのある運転を心がけましょう。
Ⅴ 霧のときの運転
霧のときは視界が悪いので、前照灯や霧灯(フォグランプ)を点灯したり、警音器を使用したりしながら速度を落として慎重な運転をする必要があります。
1 前照灯などの使用
霧のときは、前照灯または霧灯を早めに点灯し、中央線やガードレール、前車の尾灯を目安に、十分な車間距離を確保しながら速度を落として走行します。
前照灯を上向きにすると、霧に乱反射して見通しが悪くなるので、前照灯は下向きにしましょう。
2 警音器の使用
危険の防止を図るため必要があるときは、警音器を使います。4輪車の場合は、窓を開け、音を聞いてほかの車の動きを確かめましょう。
Ⅵ 道路状況の悪いときの運転
1 ぬかるみ、砂利道などでの運転
① 低速(力の強い)ギアを使い、速度を一定に保ちながら通行しましょう。
② 急ブレーキ、急加速や無理なハンドル操作をしてはいけません。
③ 土ぼこりの多い場所では、雨の降り始めは、舗装道路の表面の土ぼこりがオイル状になり、スリップしやすい場合があるので特に注意しましょう。
④ 山道などでは、地盤がゆるんで崩れることがあるので、路肩(路端から0.5mの部分)に寄りすぎないように注意しましょう。
⑤ 2輪車で砂利道などを走行するときには、体が振動するので、視線をやや前方に置き、両ひざを軽く曲げて少し後輪(駆動輪)に体重をかけるようにしてステップに立ち(中腰姿勢)、両腕の力を抜いてハンドルをしっかり握り、両膝で燃料タンクをしっかり押さえるように(ニーグリップ)して路面からの衝撃を吸収しながら、バランスをとって通過するようにしましょう。
なお、AT車(スクーター)は、着座姿勢または中腰姿勢により、速度を落としてバランスを取りながら通過しましょう。
2 雪道などでの運転
雪が降っているときは視界が悪く、道路に雪が積もると非常にすべりやすくなる(晴れの日の2倍以上すべる)ので、速度を落とし十分な車間距離を保って走行することが必要です。
凍結した道路を走行するときは、よりいっそうの注意が必要です。
また、吹雪などのときにやむを得ず外出するときは、できるだけ公共交通機関を利用し、車での外出は控えるようにしましょう。
① 視界の低下
雪が降っていると視界が悪く、前方が見えにくくなります。
前方50メートル先が見えない場所を通過するときは、前照灯、車幅灯、尾灯などを点灯させるようにしましょう。
また晴れていても風の強いときは、積もった粉雪が舞い上がって急に前が見えなくなることがあるので、注意が必要です(ホワイトアウト)。
さらに除雪によって、雪が高く積まれているところでは、そのかげから歩行者が飛び出してくることがあるので注意が必要です。